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テキサス州知事ブチ切れ 報道されない米国政策論争

米国テキサス州アボット知事、急増する不法移民の流入に耐えかねて、その不法移民をバイデン大統領のいるワシントンDCにバスで送り込んでいます。

「不法移民に大量流入される州の立場になって政策を考えろ」という事です。

以下、FOXニュースのホームページ、5月13,14日の記事からの抜粋です。

====記事====

テキサス州アボット知事は900人以上の不法移民をワシントンDCにバスで移送した。連邦議員の注目を集めバイデン大統領に国境政策を変えさせるためである。

知事は、「バイデン大統領が国境で移民を追い返すことを認めているトランプ時代の公衆衛生命令タイトル42を廃止する」というニュースを受けて、不法移民のバス輸送作戦を決定したのである。

3月だけで米国とメキシコの国境には221,000人の移民がいた。タイトル42が解除されればその数は倍増すると予想される。

バイデン政権は、毎日最大18,000人の不法移民と国境で遭遇するという最悪のケースを想定して計画を立てているという。

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【解説】

以前にも紹介しましたが「タイトル42」とは70年以上前に制定された公衆衛生法の条項です。伝染病を持つ可能性のある国の人のアメリカ入国を阻止することができるというものです。

古い法律なのですが、この法律を理由にトランプは不法移民を追い返すように指示していたのです。それで不法移民の流入が防がれていた面が相当にあるのですが、それが5月23日をもって廃止されるのです。

最悪のケースで日に18000人というと年間200日と計算して360万人の不法移民です。

で、「何とかしろ」とテキサス州知事が強引にバイデン政権に訴えているという構図です。多くの共和党およびテキサス州の人が支持しています。

実際、不法移民の問題は人の心を大きく動かします。政治を動かす大きな力になるのです。

しかしながら、日本の報道は米国の不法移民問題をまともに取り上げていません。

トランプ政権時代とその前後1年間を含めた計6年間で、「キャッチ・アンド・リリース」「サンクチュアリ・シティー」といったトランプ大統領主張の代表的なキーワードさえしっかりと解説している日本のTV番組を見たことがありません。

毎日のようにトランプ大統領を報道しながらです。陰謀論などを説明して「トランプを支持している米国人はこういった陰謀論を信じているのです」などと言い続けたのです。

しかしこの不法移民の問題、キーワードを理解しないと米国人のバイデン政権に対する不満や政治に対する心象風景は見えません。再度、解説しましょう。

 

サンクチュアリティー(聖域都市)】

全米各地にある不法移民を保護する都市です。ニューヨーク、ロサンゼルスやサンディエゴなど300以上あります。政府からの不法移民に関する調査への協力を拒否しています。

「不法滞在であっても基本的人権を侵してはならない」という名のもとに、低所得者向けの医療保険フードスタンプ(食料費補助)、住宅補助、児童福祉、合法移民向けの教育補助、職業訓練、運転免許証の交付までもが認められている都市もあるそうです。市民の税金でです。

それは不法移民が集まりますよね。当時トランプ大統領は、そういった都市に不法移民を取り締まらせる大統領令に署名し、それらの市長と激しく対立していました。

 

【キャッチ・アンド・リリース】

もともと釣りの用語です。捕まえた魚を逃がしてやる事です。

同じ事が米国国境で起こっていたのです。例えば中南米からの不法移民が密入国しようとして国境警備隊に捕まったとします。国外に追放されるのが普通だと思うでしょう。しかし捕まった人がその場で「難民申請」することにより入国することを許可されていたのです。

実際、不法移民の多くは「難民」に該当しない人が多いのです。しかしキャッチ・アンド・リリース政策では不法移民を捕まえても難民申請の文言われたら入国を認めて「x月x日に米国のxx裁判所に来なさい。そこで難民の資格があるかどうかを審査するから」といって釈放せざるをえなかったのです。

そしてその不法移民が定められた日に裁判所に来ることはまずありません。そのまま米国内に消えるのです。

2015年これに真っ向から反論する形で大統領選に登場したのがトランプだったのです。

「合法移民はよいが、不法移民はダメだ。移民したいなら正式な書類を提出しろ。また難民申請は正式な国境検問所に来てしろ。密入国しようとして、捕まったら『私は難民申請します』なんてのはダメだ。それを認めているから犯罪者、レイプ犯や麻薬の密売業者まで不法入国しているのだ」というのが彼の主張でした。

トランプ大統領が人格的に高潔とは言えないことは誰でも知っています。しかし、この主張には大きな説得力があったのです。

またトランプ2期目の大統領選、民主党の候補者10名以上を集めたTV討論会がありました。

司会者が「国境を越えて侵入しようとしている人は不法だと思いますか?」との質問に同意して手を挙げた民主党の大統領候補者は皆無でした。それら侵入者は「不法移民(Illegal Immigrant)」ではなく「滞在許可証をもたい移民(Undocumented Immigrant) 」と呼ぶべきだというのです。

それを見た瞬間「やはりトランプに投票するしかないか」と思ったアメリカ人、何百万人もいたと思います。「滞在許可証をもたない移民」に寛容なら世界中の貧しい国から密入国者がくるとすぐにわかるからです。

繰り返しますが、なぜ日本の報道機関は、こういった真っ当な政策論争を報道しないのかという怒りと疑問があります。

それを理解せずに米国選挙や政治の流れは分かりません。5月23日に廃止されるタイトル42、その後に起こる混乱への報道に注目です。

PS

もう一つ、この件を通じて気が付いた事があります。日本と米国という交流が多く情報交換されている国の間でさえ「情報統制ができる」という事です。白黒(ヒーローと悪役)を明確につける形で報道する方が煽情的になり視聴率がとれるのでしょう。

 

上記はまぐまぐの有料メルマガからの転載です。

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