大澤裕の記事一覧 - まぐまぐニュース! (mag2.com)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
国土安全保障長官、マヨルカス氏への弾劾訴追
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
米国の報道では頻出しながら、日本ではほとんど報道されない名前があります。
アレハンドロ・マヨルカス氏。米国の国土安全保障(ホームランドセキュリティ)長官です。
彼の弾劾訴追手続きがすすんでいます。南部国境で起きている不法移民の急増に対応できていないからです。
弾劾訴追は、身分保障された官職にある者を、義務違反や非行などの事由で、議会の訴追によって罷免し処罰する手続きを指します。
共和党の支配する下院ではその手続きが進んでいます。政策問題で、閣僚が弾劾訴追手続きされるのは極めて異例です。
共和党を支持するFOXニュースは以下のように報じています。
============
記事抜粋
水曜日の公聴会は、3年にわたる移民危機への対応を調査した下院の国土安全保障委員会による調査報告の後、最初の弾劾公聴会となる。
共和党は、先月だけで30万2000人の移民が出くわした歴史的な移民危機を、"キャッチ・アンド・リリース "と呼ばれる国内への移民の解放を含む政策のせいだと非難している。
そして不法移民の仮釈放の広範な使用、狭められたICE(移民関税執行局)の執行、壁建設の停止をマヨルカス長官の義務違反問題として指摘している。
============
解説
キャッチ・アンド・リリースは捕まえた不法移民を裁判所に出廷することを条件に米国内に開放する事です。共和党支持者は強く非難しており、トランプ支持の理由となっています。
それに対して、民主党系のニーヨークタイムズは以下のように反論しています。
「共和党は、マヨルカス氏が弾劾訴追の基準である犯罪を犯したという証拠もなく、事実上、アメリカ国民を危険にさらすと主張する移民政策を理由に同氏を罷免しようとしている。」
実際、弾劾訴追が成功する可能性は低いとされています。上院は民主党が多数派のためです。
こういった弾劾訴追やいくつかのトランプ元大統領への訴訟は、大きく言えば今年11月の大統領選へ向けた政治的なショーの意味あいが大きいです。
共和党系は、大統領選の焦点を不法移民問題にもっていきたいと考えています。それでこのような弾劾訴追を行うのでしょう。
共和党系はここにメディアの焦点をあててほしいのです。
民主党系は、この問題に触れたくない、という立場です。
多くのマスコミは民主党系ですから、この不法移民問題に触れたくありません。
といっても実際、大きな問題になっていますから、最低限の報道をするという感じです。
この「不法移民問題については最低限の報道しかしない」というマスメディアの姿勢が、まさに米国の分断を生んでいる元凶です。
トランプのせいじゃありません。分断の原因を分析するほどの難しい話でもないです。
単に、多くの米国民がもっとも心配する事をボカして詳しく報道していない事が問題なのです。
それでも米国では最低限の報道はされていますが、日本ではほとんどされていません。
もし読者の皆さんが、このホームランドセキュリティー長官の「マヨルカス」という名前を聞きなれていないのなら、それが証拠の一つでしょう。
──────────────────
■執筆後記
──────────────────
ご要望等あれば news@ppmj.com までお知らせください。
──────
大澤 裕
・株式会社ピンポイント・マーケティング・ジャパン 代表取締役社長 www.ppmj.com
・情報経営イノーベーション専門職大学 客員教授
・法政大学大学院イノーベーションマネジメント研究科 兼任講師
慶應義塾大学を卒業後、米国バンカーストラスト銀行にて日本企業の海外進出支援業務に従事。カーネギー・メロン大学でMBAを取得後、家業の建築資材会社の販売網を構築するべくアメリカに子会社を設立。2000年、ピンポイント・マーケティング・ジャパンを設立。海外のセールスレップとディストリビューターを使った販路網構築・動機づけの専門家として活動を行っている。2015年「中小企業が『海外で製品を売りたい』と思ったら最初に読む本」を、2017年「海外出張/カタログ・ウェブサイト/展示会で 売れる英語」をダイヤモンド社から上梓。
──────
本メールマガジン内のコンテンツはすべて著者に帰属します。引用される場合は当方までご一報の上、「まぐまぐメルマガ、大澤裕の『なぜか日本で報道されない海外の怖い報道』から引用」と明記表現ください。